葬儀の豆知識
葬儀で弔辞を依頼されたら?書き方やマナーを解説
葬儀は故人が亡くなられて数日のうちに行われますので、弔辞を依頼された場合は葬儀当日までに内容を考えて、紙に書くなどの準備をしなければなりません。しかし、どのような内容で、どのように書くのか、知らないと戸惑ってしまいますよね。当然、葬儀のマナーを守ることも求められますので、気をつけるべきポイントもご紹介していきましょう。
葬儀における弔辞とは
葬儀では宗教を問わず弔辞が読まれることが一般的です。弔辞は文字通り「故人を弔うための言葉」で、故人を送り出すために最後のお別れの言葉をつづった手紙ともいえます。
故人と親交が深かった人が参列者の代表として選ばれ、故人の死を悼み悲しむ気持ちを表すものですが、著名人の「お別れの会」のように故人に語りかけるような口調で読まれることは少なく、通常の葬儀では主に遺族や参列者に聞いていただき、悲しみや思い出を全員で共有する意味合いが大きいです。
弔辞の書き方
最初に、弔辞の「書き方」についてご紹介していきます。弔辞を書く際には、無理に難しい言葉を使う必要はありません。遺族や参列者が聞き取りやすく、理解しやすい言葉を選び、弔意が伝わるような文面にすることが大切です。
それでは、弔辞を書く際に重要なポイントである「構成」「文字数」「内容」について詳しく解説していきましょう。
基本の構成
まず構成ですが、全体の構成については特に決まりはありません。自由に書いて良いのですが、自由にといわれると何を書いて良いのか迷ってしまいますよね。そのような場合には次のような構成を基本型として、肉付けしていくと書き進めやすいでしょう。
《前文》
① お悔やみの挨拶、故人を悼む言葉、自分の心情を述べる。
《本文》
② 故人の経歴や功績、人柄について。
③ 故人との関係、自分との思い出深いエピソード。
④ 故人への感謝の気持ちや、今後への決意。
《結び》
⑤ 遺族への気遣いの言葉と、故人の冥福を祈る言葉。
⑥ 日にちと自分の名前。
平均的な文字数
弔辞は葬儀の流れの中で数人が読む場合もあるので、決められた時間内でおさまるようある程度の文字数を決めてまとめると良いでしょう。弔辞はゆっくり読んで3分、長くても5分以内におさめるのが望ましいです。文字数でいうと1,000文字前後が目安となります。
故人の業績やエピソードに応じて文字数や時間を増減しても構いませんが、あまりにも長すぎるのは式の進行に支障をきたします。事前に予行練習を兼ねて読み上げながら時間を計り、短すぎたり長すぎたりする場合は書き直して、長さを調整するようにしましょう。
主な内容
弔辞は、その場で思いついたことを話せば良いというものではありません。次のように、故人を送り出し、遺族の慰めとなるような、弔辞にふさわしい事柄を選んでください。
- 訃報を受けたときの気持ち
- 故人の功績や人柄を偲ばせるエピソード
- 故人との出会いや、生前のエピソードなどを交えた思い出深い出来事
- お世話になったことへの感謝の気持ちや、故人の遺志を継ぐなどの決意
- 故人の冥福を祈る気持ちやお別れの言葉
- 遺族へのお悔やみの言葉
弔辞に使ってはいけない言葉
弔辞は葬儀の一部ですから、当然その文章も葬儀のマナーに沿ったものでなければなりません。葬儀にはさまざまな決まりごとがありますが、使ってはいけない言葉というのもあります。
ここでは、弔辞の文面に使用する言葉で注意が必要な3つのパターンについて見ていきましょう。
重ね言葉・忌み言葉
まず1つ目は「重ね言葉」です。たびたび、重ね重ね、しばしば、くれぐれも、しみじみ、ますます、はるばる、などの言葉はつい使ってしまいそうですが、繰り返す表現は不幸が重なったり続くことを連想させ、縁起が悪いとされているので避けなければなりません。
2つ目は「忌み言葉」です。簡単にいうと、その場にふさわしくない差し控えるべきNGワードのことで、「終わる」「消える」「切る」などがそれにあたります。
また「浮かばれない」「迷う」などは、仏式の葬儀では故人の成仏を否定する表現となり、忌み言葉とされています。。逆に「冥福」「供養」「成仏」「往生」などは仏教用語ですので、これらを神式やキリスト教式の葬儀で用いることはマナー違反です。
直接的な言葉
そして3つ目は「直接的な言葉」です。これは生死についての直接的な言葉を避けることで、「死ぬ」「死亡」「死去」は「ご逝去」や「他界」などに言い換え、「生きる」「存命中」ではなく「生前」というふうに、「悲しみ」は「傷心」「痛恨」「悲哀」「哀惜」といったように言い換えるのがマナーです。
「自殺」や「急死」なども強すぎる言葉ですので避け、「四」「九」の数字は「死」や「苦」を連想させるので使用しないよう注意しましょう。
また、仏式では文章に句読点を打たないというのが古くからの風習となっているので、覚えておいてください。
弔辞の書式
弔辞は、葬儀で読み上げた後に祭壇にお供えして遺族が保存することになるので、失礼のないようにマナーに沿って書式を整える必要があります。正式には薄墨を使用し、巻紙に毛筆で縦書きにします。それを蛇腹にたたみ、奉書紙で包むのです。
形式をそれほど重視しない小規模な葬儀や家族葬であれば、便箋や白い紙に万年筆などを使って書き、白封筒に収める様式でも構いません。
また、巻紙や奉書紙は「式辞用紙」として書道用具店や百貨店、インターネットでも購入できるので、そのような式辞セットを利用すると便利です。
たたみ方・包み方
弔辞の紙は折り方と包み方にも決まりがあります。参列者や遺族の目にも触れるものですので、適切な折り方と包み方を覚えておきましょう。
巻紙は半切り紙を横につないで巻いてある紙で、横に長いために徐々に開きながら読めるように蛇腹折りにするか、封筒に入れる場合は封筒の幅に合わせて折ると良いです。
便箋を使用する場合は、上包みや封筒の幅に合わせて三つ折りや四つ折りにします。
奉書紙を上包みとして使用する際のたたみ方は、奉書紙を広げて三つ折りにし、弔辞を奉書紙の中央に置いてください。右側から先に折り、左側が上になるように重ねます。上包みの上と下の部分を裏側に折り、表側に「弔辞」と書きます。
弔辞を読むときの流れ
ではここで、弔辞を読む際の流れをご紹介しておきましょう。
- 名前を呼ばれたら祭壇の前に進み出ます。
- そして、遺族に一礼し、故人に一礼します。
- 弔辞の上包みから中の巻紙を取り出し、上包みは巻紙の下に重ねて持ちます。(弔辞台がある場合はその上に置きます)
- 目線が下がりすぎない高さに両手で持ち、心を込めて読みましょう。
- 読み終えたら元のように包み、祭壇にお供えします。
- 故人に一礼し、遺族に一礼して席に戻ります。
おおよそ、このような流れになりますが、読み終わった弔辞は祭壇にお供えする場合や、弔辞台がある場合はそこに置くなど、葬儀によって異なる場合があるので、あらかじめ葬儀社のスタッフに手順を確認しておくと良いでしょう。
弔辞のマナー
弔辞を読む際のマナーもご紹介しておきましょう。
まず、弔辞を包まずに持ち歩くのはマナー違反です。折りたたんだ弔辞は必ず上包みで包んでください。
上包みは奉書紙が望ましいですが、準備が難しい場合はやや厚手の白地の紙で代用するか、白地の封筒に入れるなどします。
封筒は二重のものでは「不幸が重なる」として縁起が悪いとされているので、必ず一重の封筒を使用するようにしてください。
そして、読む際には遺族や参列者を不快にさせないように注意することがマナーです。あまりにも淡々としすぎたり、逆に演劇のように大げさにならないように、時折遺影を見つめ、全員に聞こえるように、落ち着いてゆっくりと読むようにしましょう。
葬儀における弔辞についてのよくある質問
ここまで、「書き方」や「内容」「使ってはいけない言葉」「書式」そして読み方などの「マナー」を一通りご紹介してきました。概ね基本的な事柄はお分かりいただけたかと思いますが、最後に、弔辞についてのよくある質問で多い「依頼される人」についてと「依頼を断ること」の2つについてご紹介しておきます。
弔辞を依頼される人数は?
弔辞は会葬者の中から故人と特に親交の深かった方を、葬儀の規模によって1人から数人に依頼するのが一般的です。
数人に依頼する場合は、弔辞の内容が重ならないように故人との関係性が異なる人を選びます。例えば、仕事関係では立ち場よりも関係性の深さを重視して、時間や経験を多く共有していた人を1人、学生時代にお世話になった教師や同級生、幼なじみなどから1人、そして、孫を可愛がっていた祖父母の葬儀であれば孫に依頼するといった具合です。
弔辞の依頼を断っても良い?
弔辞は前述したように生前故人と親しかった人が依頼されることが一般的ですが、大勢の人の前でスピーチをするのは緊張して苦手に感じる人も少なくないでしょう。準備も大変そうで断りたいという気持ちになることもあるでしょうが、弔辞を依頼された場合には引き受けるのがマナーです。どうしても引き受けられない事情がない限りは快く引き受けましょう。
また、こちらから弔辞を立候補することはマナー違反ではありません。誰もが弔辞を任せてもらえるわけではありませんが、「できることなら最後に自分の言葉を伝えたい」という想いがある場合は、遺族に相談してみても良いでしょう。
まとめ
葬儀では何かと細かな決まりごとが多く不安がつきまといますが、弔辞を依頼された場合には快く引き受け、心を込めて準備をしてください。
弔辞の文章は丁寧なだけでなく、ふだん話している口語を使って自分の言葉で書くと気持ちがより伝わりやすくなりますが、霊前に供えた弔辞の原稿は喪家によって保存されますので、文面はよく吟味しましょう。
読み上げる際には、故人への気持ちを込めながらも、あまりにも感傷的になりすぎないように配慮が必要です。
そして、故人や遺族に失礼のないようにルールやマナーに沿った振る舞いを心がけてくださいね。