葬儀の豆知識
散骨に必要な手続きはある?必要な書類や流れを解説
時代とともに、葬儀に対する意識は変化してきています。近年では親族間の付き合いの疎遠化や新型コロナウイルスの影響もあって、葬儀は小規模化・簡素化の傾向です。お墓も従来の形にとらわれず、「散骨」を選択肢の一つとして検討する人も増えています。
また、少子化の影響による「お墓の跡継ぎ問題」もあって、墓じまいを検討するにあたっては寺院などでの永代供養だけでなく、散骨による永代供養を選ぶ人も出てきているのです。そこで本記事では、散骨にはどのような許可が必要なのか、法に触れることはないのか、そして必要な手続きや書類、流れや方法などについて詳しく解説していきます。
散骨とは
「散骨」とは、いわゆる自然葬の一つで、遺骨を粉末状にした「遺灰」を海や山などに撒き、亡くなられた方を自然に還すという考え方の葬送方法です。
「海洋散骨」は万葉の時代にはすでに行われていたようですが、近代では自然回帰志向の高まりもあって、2000年ごろからは「樹木葬」が話題になりました。
一般的な樹木葬は樹木を墓標とする区画に遺骨を埋葬するため「お墓」を持つことと同じになりますが、「山林散骨」や「海洋散骨」であれば納骨する場所やお墓を必要としないため、お墓の跡継ぎ問題を解決する永代供養の手段としても考えられるようになっています。
散骨に手続きは不要
散骨を行う際には基本的に自治体などへの申請や手続きは不要です。これは散骨に関しての法律がなく、手続きをするための書類が存在しないためです。
しかし、散骨を進めるにあたっては遺骨の保管状況や状態によって書類や手続きが必要になる場合もあります。例えば火葬して自宅で手元供養をしていた場合や火葬して寺院や納骨堂に預けていた場合、火葬してお墓に納骨していた場合、火葬せずに遺体をそのまま土葬してあった場合などでは散骨するまでの流れが異なり、書類を必要とするケースがあるのです。
用意しておくと良い書類
散骨は違法ではありませんが、「墓地・埋葬等に関する法律(埋葬法)」や「死体等遺棄罪(刑法190条)」があり、必要な届け出や必要書類が発行されていないと「遺体遺棄」にあたり、刑罰を受けることになります。
故人が亡くなった際に自治体などから発行された書類は散骨の手続きには必須ではないものの、万が一の場合に備えて用意しておいたほうが良い書類もあるので、ご紹介していきます。
火葬許可証
「火葬許可証」は、埋火葬許可証ともいい、亡くなった方の火葬を役所が許可したことを示す書類です。人の死に際して間違いなく死亡したという医師の診断のもと、「生き返る可能性がないので火葬しても良い」ということを証明するものです。火葬許可証を発行してもらうには「死亡届」とともに医師の「死亡診断書」を役所に提出する必要があります。
散骨する際には、場合によってはその遺骨が事件性のない死亡事由によるものであることを証明する必要があるかもしれませんので、火葬を行った際に発行された火葬許可証を用意しておきましょう。
埋葬許可証
「埋葬許可証」は、遺骨をお墓や納骨堂に納める際や、お墓を移転する際に必ず必要となる書類です。前述した「火葬許可証」を火葬場に持っていき荼毘にふされると押印され、「埋葬許可証」となります。こちらも「埋火葬許可証」という名称で発行されるなど自治体によって名称が異なる場合があります。
この書類は故人が亡くなったことを証明する「遺骨の住民票」ともいえる重要な書類ですから、永久保管が望ましい書類となります。万が一原本を紛失した場合は、火葬から5年以内であれば再発行できます。
改葬許可証
「改葬許可証」は、お墓などに納骨されていた遺骨を他の場所に移す場合に必要になる書類で、自治体に届け出をして発行してもらいます。改葬許可証を発行せずに勝手にお墓などから遺骨を取り出して他の場所に埋葬することは禁止されていて、家族や先祖の遺骨であっても違法行為となります。
改葬許可証の発行を申請する際には、現在遺骨を納めているお墓の管理者が発行する「埋葬証明書」と、遺骨を移動させる先のお墓の管理者が発行する「受入証明書」が必要です。その際、改葬許可の申請は遺骨を移動させる先の自治体で行うということを覚えておいてください。
散骨の際に用意しておくと良いもの
散骨は一般的な葬儀とは形式が異なるものの葬儀の様式の一つですから、通常の葬儀と同様に心を込めて故人を送り、満足のいくセレモニーにしたいですね。そのためには事前に準備すべきことや、用意していくと良いものがあります。また、海や山に撒く際には注意すべきこともあるので合わせてご紹介します。
粉骨した遺骨
まず遺骨ですが、通常、火葬をしただけの遺骨は骨の塊の状態で骨壺に納められていますね。しかし散骨をする際には、遺骨を砕き必ずパウダー状にしなければなりません。
その理由は「埋葬法」という法律で、遺骨の粒の大きさが2mm未満であれば「粉塵」の扱いになりますが、2mmを超えたものを撒くと「遺骨遺棄罪」にあたると定められているからです。ですので、散骨を行う際には「粉骨」を行ってくれる業者に依頼をするなどして、事前に遺骨を粉末状にしておく必要があります。
故人に手向ける献花・献酒
古代より弔いの際に死者に手向けるものといえば「お花」です。お花は故人や遺族を慰めてくれる優しい力がありますし、海や山に撒いても自然に還ってくれますので、一緒に撒くには最適です。故人が生前に好んだ花を選び撒くことで、故人を偲ぶとともに華やかさを添えてくれます。
また、故人が生前にお酒を嗜まれていたなら「お酒」を準備していき、献酒として一緒に撒くのも良いでしょう。ただし、環境への影響を考慮して少量に留めておきましょう。
そして、花を包んだビニール類やお酒の瓶などは海や山に残さないよう注意し、自然環境に配慮するようマナーを必ず守ってください。
故人に向けた手紙
家族を亡くした遺族は、故人に対するそれぞれの思いがあることでしょう。そのような思いを手紙にしたためて一緒に撒き、故人に思いを届けましょう。その際に使用する紙は水に溶ける水溶性の紙を使用してください。海に流す場合にはもちろんのこと、山に撒いた場合でも雨などによって自然に還ります。
この他にも故人との思い出の品や、故人が好きだった音楽などを準備していくと、より近くに故人を感じることができ、思い出深く満足度の高いセレモニーとなるでしょう。
散骨までの流れ
さて、ここまで、散骨をする際に準備すると良い「もの」についてご紹介してきましたが、最後に散骨を行うまでの「流れ」をご紹介します。そして実際に散骨を実施するために知っておきたい事柄について注意点も合わせて見ていきましょう。
散骨をしようと考えた場合には次のような流れで「場所」「業者」「粉骨」について決めていきます。
散骨方法や場所を決める
散骨には大きく分けて、海に撒く「海洋散骨」、山に撒く「山林散骨」、そして特定の場所に飛行機から撒いたり、カプセルに入れた遺灰をロケットで宇宙空間に運ぶなどの「空中散骨」があります。
海洋散骨でも、海岸などの陸地から撒くのか、船で運んで洋上に撒くのか、また飛行機で上空から海に撒くのかなど、いくつかの方法が考えられます。
このような方法には個別に散骨するか、または何組かの散骨を合同で行うかなどのプランもあるので、故人の嗜好に合わせて場所を選び、予算なども考慮して決めると良いでしょう。
業者を選んで契約する
近年、散骨による葬儀を専門に行う業者や、散骨を取り扱う葬儀会社も出てきています。
散骨は必ずしも業者に依頼する必要はなく、社会的なルールを守れるようであれば自分で行っても構いませんが、自治体によっては散骨自体が禁止されている場合もあるので、知らずに行ってしまうと条例違反や迷惑行為になってしまいます。
たとえ自分の土地であっても他人の居住域や観光地に近い場所、湖を含めた水源地に近い場所などに撒くとトラブルになることも予想されますので、専門の業者に依頼して行うほうが安心でしょう。
業者によって散骨する場所や方法、料金が異なるので、いくつかの業者を比較して希望に合った業者を選び、後々のトラブルにつながらないようしっかりと契約を行うことをおすすめします。
粉骨する
前述したように散骨する際には遺骨を細かく粉砕する必要がありますが、自分で行うにはそうとうな時間と労力を要するため、現実的とはいえません。
散骨による葬儀を取り扱っている葬儀会社や散骨葬専門業者では「粉骨」も込みで請け負うことも多いので、そのまま粉骨も同時にお願いすることが1番手軽な方法となります。
また、インターネットなどで検索するといくつもの粉骨専門の業者が出てくるので、その中で親切・丁寧に粉散を行ってくれそうな業者を選んでお願いしても良いでしょう。
散骨式を実施する
粉骨をして必要なものを準備したら、いよいよ散骨となります。自分で散骨を行う場合は都合の良い日程を組んで実施することができますし、業者に依頼して行う場合でも個別での散骨を行う場合はある程度こちらの希望に添ってもらえるでしょう。
しかし、何組かの家族が合同で散骨を行う場合は日程調整が必要であったり、また、自分が現地は行かず業者に代理散骨を依頼する場合には業者の決めた日程で2~3ヶ月おきに行われるなど、方法などによって実施日は異なることも認識しておいてください。
まとめ
今回は「散骨」について解説しました。散骨は自分で行うこともできますが、法律や住民感情に触れるなどトラブルになる懸念があるので、自己判断で行うことは避けたほうが無難でしょう。
専門の業者に依頼する際には料金だけで比較するのではなく、満足のいく思い出深い散骨葬になるように「希望の場所で散骨できるか」「どのような形態で行うのか」「費用が明確であるか」などのポイントを確認した上で、遺族の気持ちを汲み取って丁寧な対応をしてくれる業者を選ぶことが重要です。