葬儀の豆知識
位牌分けとは?やり方や費用、疑問点まとめて紹介
位牌は、故人の戒名(法名)や没年月日などが記された木札で、仏式の儀式で魂入れ(たまいれ)を行うことによって故人の魂を宿すものとなり、供養の対象となります。仏教のほとんどの宗派では故人の供養のために位牌は欠かせません。
このような大切な位牌を分けるとはどういうことなのでしょうか。まずは「位牌分け」とは何か、というところから見ていきましょう。
位牌分けとは
位牌は亡くなった人それぞれに一基ずつ作られ、多くの場合は本家などの跡継ぎの家に祀られ、代々継承されていくものです。しかし、故人一人の位牌を複数基作って複数の親族の家で祀ることがあり、それを「位牌分け」といいます。
位牌分けを行う理由としては、
- 本家から遠いところに住んでいる親族がなかなかお参りに行けない
- 分家でも手元に位牌を置いて供養をしたい
- 心のよりどころとして親の位牌を手元に置きたい
などがあります。
元々は一部の地域の慣習
位牌分けは、中部地方や北関東の一部の地域で行われていた"親の位牌を子どもの数だけ作る"という慣習でした。位牌分けをして複数の家で管理することによって、何らかの理由で位牌の継承ができなくなるといったリスクを回避する意味もあったようです。
現代では核家族化が進み、親族が遠く離れたところに住むことも珍しくなくなったため、前述のような理由によって両親の位牌を複数基作り、それぞれの家でお祀りするという家が、地域を問わず行われるようになっています。
位牌分けの特徴
位牌分けは、一人の故人の位牌を複数基作ることと、長男・長女、次男・次女、実子・養子、婚出・分家を区別することなく等しく祀り手となることが特徴です。ただし、他家へ嫁いだ娘や未婚の者には、一般的に位牌分けを行いません。
祀り手となる子どもの家では、夫方の両親の位牌と、妻方の両親の位牌をともに祀ることがあり、その場合は一家の仏壇で、家の先祖である父系の位牌と、各世代で分与された母系の位牌が祀られることになります。
位牌分けのやり方
次に、一般的な位牌分けのやり方を紹介します。
位牌分けは位牌を購入するだけでできるものではなく、手順を踏んで必ず行わなければならない決まりごとがあります。仏壇に安置する際も好きなように置けば良いわけではありません。
せっかく故人を供養するために位牌分けを行っても、間違ったやり方をしてしまうと意味がなくなってしまうので、正しく且つスムーズに行えるよう位牌分けの流れを見ていきましょう。
位牌分けの手順
位牌分けの準備としては、まず必要な数の「本位牌」を作ります。本位牌はお寺で用意してくれるものではないので、必ず仏壇・仏具店などに作成をお願いしなければなりません。
近年ではネットで手軽に注文することも可能ですが、品質の善し悪しに不安を感じる場合は信頼できる店舗で購入するほうが良いでしょう。
位牌の作成に要する時間は、既成の位牌に文字入れをする場合でも早くて1週間~数週間前後、オーダーメイドにする場合などには数ヶ月かかることもあるので、必要とする日に間に合うように早めに依頼をしておきましょう。
開眼供養
位牌を新たに作った場合には「開眼供養(かいげんくよう)」を行う必要があります。
開眼供養は「魂入れ(たまいれ)」や「お性根入れ(おしょうねいれ)」とも呼ばれ、僧侶にお経を上げてもらい故人の魂を位牌に込める儀式を行うものです。開眼供養を行っていない位牌はただの木の板に過ぎず、この魂入れの儀式を行って初めて故人の霊を宿し供養の対象となります。
位牌分けのために用意された本位牌は、すべてこの開眼供養をしてもらわなければなりません。
位牌を安置
位牌分けをして新たに祀り手となった方々は、故人の魂の宿った本位牌を自宅へと持ち帰り、それぞれ仏壇などに安置することになります。
仏壇の中では位牌を置く場所が決められていて、最上段の中央にはご本尊を、そして位牌はそれより一つ下の段にお祀りすることが一般的です。このとき、上の段のご本尊などが位牌で隠れてしまう場合は、位牌をもう一段下げるなどの工夫をしましょう。
このような仏壇の飾り方は宗派によって異なるので、故人の宗派に沿った飾り方を確認して、正しく安置してください。
位牌分けの費用
位牌分けにかかる費用としては、準備する「位牌の費用」と、開眼供養を行う際に僧侶にお渡しする「お布施」が必要になります。
近年、位牌は伝統的な漆塗りのものからモダンなデザインのものまで多種多様です。値段も数千円から十万円以上のものまでピンキリなので、それぞれの好みや予算に合わせて準備してください。
開眼供養の費用(お布施)は、位牌一基につき数千円から1万円が相場といわれています。お布施の金額は地域の慣習やお寺によって異なる場合があるので、親戚の人やお寺に確認することをおすすめします。
位牌分けに関するよくある質問
位牌は故人の魂を宿すとして大切に扱われるものなので、分けてしまって大丈夫なのだろうかと不安に感じたり、問題ないのだろうかと心配になるのは当然のことでしょう。そのような不安を解消し、安心して位牌分けを行うために、ここからは位牌分けについての疑問や質問を取り上げて詳しく解説していきます。
位牌分けに宗教は関係ある?
位牌は元来、仏教で使用される仏具の一つです。仏教のほとんどの宗派では位牌をお祀りし位牌分けを行うことができますが、浄土真宗だけは唯一位牌を使用しない宗派となっていて、位牌分けの概念もありません。
また、神道では故人の御霊(みたま)を移した「霊璽(れいじ)」と呼ばれるものがあり、これを家の守護神として祀ります。
キリスト教では、信仰すべき対象は「神」「精霊」「キリスト」の三位一体のみなので、位牌を祀り先祖を崇拝することは本来であれば御法度なのですが、日本の位牌の風習を取り入れて位牌のようなものを飾る人も稀にいるようです。
このように、位牌についての認識は宗教によって異なります。もし、親族間で宗教や宗派が異なる場合は注意が必要です。葬儀やお祀りの仕方は故人の宗教・宗派で行うことが基本です。故人の遺志を尊重して行うようにしましょう。
位牌分けをしても成仏できる?
位牌を分けてしまったら故人の成仏に影響しないだろうかと心配になる方もいるでしょう。しかし、「お釈迦様」は亡くなった後に遺骨がいくつもに分けられ、世界各地に複数の供養塔が建てられて祀られています。
また、故人の遺骨を「分骨」して、複数の親族で祀ることも古くから行われています。位牌を分けることで成仏を妨げるようなことはないと考えて良いでしょう。
浄土真宗では、亡くなった人はこの世を彷徨うことなくすぐに極楽浄土に旅立ち成仏できると考えられているため、そもそも位牌を使用することもありません。
位牌は複数に分けても問題ないの?
位牌を分ける習わしがない地域の人にとっては、位牌を分けて大丈夫なのかと不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、元々位牌は一霊につき一基でなければならないという決まりはなく、冒頭でもご紹介したように古くから位牌分けを慣習として行ってきた地域もあるので、親族の生活環境や事情に合わせて位牌を分けそれぞれに祀ることは、全く問題ありません。
位牌を分けて親族がそれぞれの家で手を合わせてお参りすることは、むしろ故人の供養になるといえます。
位牌分けのタイミングは?
位牌分けはいつ行っても構いません。ただ、位牌分けのために親族がわざわざ集まるのも大変なので、法事・法要に合わせて行うことがおすすめです。
浄土真宗以外の仏教の宗派では、葬儀の際に仮の白木位牌を作ります。その仮位牌は四十九日の法要の際に本位牌に作り換えて、そのタイミングで本位牌を複数基作ることがベストといえます。
本位牌は開眼供養をする必要があるため、新たに作成した複数の位牌も四十九日のときにまとめて開眼供養をしてもらえれば、手間が省けるのです。お布施を納めるのも一度で済みます。
四十九日の法要以降であれば、一周忌・三回忌・十三回忌などの親族が集まるタイミングに合わせて行っても良いでしょう。
位牌の処分方法は?
位牌は故人の魂が宿る大切なもので、基本的には処分をするものではありません。
ただし、次のような場合には処分を行うことがあります。
- 葬儀の際に作られた仮位牌を本位牌に替える場合
- 位牌が古くなったり傷んでしまって作り替える場合
- 夫婦連名で1つの位牌に作り替え、古い位牌を処分したい場合
- 弔い上げをして先祖代々の位牌に合祀する場合
- 位牌の継承者がいない場合
このように位牌を処分する場合は、新しい位牌を作ったときに開眼供養を行うのとは逆に、位牌から故人の魂を抜くための「閉眼供養(へいがんくよう)」を行わなければなりません。
閉眼供養は僧侶にお願いしてお経を上げてもらい、魂を抜いてもらった位牌はお寺でお焚き上げをしてもらうのが一般的です。
まとめ
位牌分けは一部の地域の慣習から始まり、現在では地域に関係なく行われるようになっています。位牌を分けてお祀りすることが故人の成仏の妨げになることはなく、仏教上の問題もありません。むしろ親族がそれぞれの自宅で毎日位牌に手を合わせることができるようになり、故人の供養になります。
もちろん位牌を分けて祀るからには、位牌を大切に安置し、お盆や法事などの行事をきちんと執り行わなければなりません。
位牌の安置の仕方や法要のやり方は、地域やお寺、宗派によって異なる場合があるので、親族や菩提寺にしっかりと確認をして、位牌の祀り手として正しくご供養していくことが大切です。