お葬式に参列する際、誰もが気をつけているマナーですが、参列についてのマナーを調べている人は多くいるでしょう。しかし、マナーの中で意外と盲点となっているのが、お葬式前後に振る舞われる食事マナーです。
お葬式での食事は滅多にないため、イマイチ分からないという方も少なくありません。
そこでこの記事では、お葬式のときの食事マナーなどをご紹介します。
お葬式の食事の名称
一口にお葬式の食事といっても、シーンによって名称が異なり、意味や内容も変わってきます。どんな種類があるのか、それぞれ確認していきましょう。
◆通夜振舞い
通夜振舞いは、通夜のあとに行われる食事会のことです。
地域や通夜の規模によって形式はいろいろありますが、目的は共通して
「みんなで故人を偲ぶため」に行われます。
参加は必須ではなく明確な決まりはありませんが、案内されたらできるだけ参加するのが好ましいとされています。
◆精進落とし
精進落としは、葬儀のあとに遺族が僧侶や参列者を労うことを目的として振る舞われる食事のことです。元々は四十九日法要のあと、精進期間が終わったときなどに食べる食事のことを指していました。
しかし、近年では遠方からの参列者への配慮として初七日を早めて行うことが増えており、
「精進落とし」もそのあとのタイミングで振る舞われることが多くなったとされています。
また、場所によっては「精進明け」と呼ばれることもあります。
通夜振舞いの流れ
通夜振舞いは、通夜のあとに行われ、開催される規模や地域のしきたりによって呼ばれる範囲が異なります。
基本的にはアナウンスがあれば参列するほうが良いでしょう。
逆に勝手に入ってしまうと失礼に値しますので、その場の指示に従ってください。
席順は決まっていませんが、喪主の周りには親族が集まることが多く、故人との関係性に合った距離に着席します。
その後、喪主の挨拶からはじまり、通夜振舞いの食事が始まり、会食中は、遺族が参列者にお酌をしてまわります。開始から終了まではさほど長くなく、1時間程度で喪主による終わりの挨拶となります。
食事の内容やボリュームは地域によって異なり、お酒などを含め大量の料理が運ばれるところもあれば、軽いおつまみ程度の食事だけの場合もありさまざまです。
精進落とし流れ
初七日法要のあとに行われる精進落としは、通夜振る舞いとちがって参加人数が限定されていることがほとんどです。
「火葬場まで同行した」や
「親族や近しい人」などが参加することになり、しっかりと全員が着席してからスタートします。
慰労会のような意味を持つため、喪主やその周りの人は末席に座り、僧侶が上座に座ります。喪主の挨拶のあと、
「献杯」となり宴席が開始されます。
葬儀場と火葬場が同じ場所にある場合などは、火葬中に精進落としが行われることもあります。また、葬儀の形や遺族の考え方次第で、宴席ではなく折り詰め料理を配り対応することもあるでしょう。
お葬式の食事のマナー
お葬式では、しばらく会っていない人と顔を合わせることもあるでしょう。
ついつい懐かしくなり積もる話もあるかもしれませんが、あくまでも故人を偲ぶ場ですので、マナーをしっかり守らなければなりません。
そこで、食事の際、どんなことに気をつければ良いのかを説明します。
◆故人と関係のない話はしない
故人との思い出をしめやかに語る場としての食事会ですので、故人とまったく関係ない話で盛り上がることは避けましょう。
特に慶事の話題などはタブーとされています。
親戚同士で顔を合わせるときには、ついつい結婚や子供の話題を選びがちですが、最善の注意をし、そういった話はしないようにしましょう。
◆故人の死に直結する話題は避ける
いくら故人の話をするからといって、死に関わる直接的な話はやめておきましょう。
喪主や近しい方は特に、気持ちを整理しきれていない場合が多いため、死についてではなく、生前の思い出を語り合うようにしてください。
また、言葉を選んで会話することも必要です。
◆大声で騒いだり、のんびりしすぎない
あくまでも葬儀のあとに行われる食事会ですので、たとえ大人数で集まったとしても大声で騒がないのがマナーです。
暗い雰囲気にすることもありませんが、場を弁えた行動を心がけましょう。
また、喪主をはじめとした遺族の方は疲れが溜まっていることも多いので、通夜振る舞いなどにおいて長居せず、頃合いを見計らって退出しましょう。
◆席順に気をつける
前述でも話しましたが、通夜振る舞いと精進落としでは意味が異なるため、席順も変わってきます。
喪主との位置関係には気をつけてください。
通夜振る舞いでは、先に退出することもあり、親族でない方が中心に行ってしまうと、帰りの際に迷惑がかかってしまうことがあります。
お葬式の種類によって食事は変わる?
形式や宗派によって葬式の食事は異なります。
ここからはそれぞれの違いについて解説していきます。
◆宗教によって変わる食事
神道に通夜はありませんが、仏教における通夜に近い儀式として
「通夜祭」があります。
神道の通夜祭で振舞われる食事は
「直会(なおらい)」です。
直会では神事のあとにお供物を斎主や参列者全員でいただき、神様との結びつきを強めるという意味が込められています。
食事内容の大きな違いは肉や魚などの生ものが禁止されていないという点です。
とはいえ形式は仏教の通夜振舞いと変わらないため、特別なマナーはほとんどありません。
また、キリスト教には通夜という考え方がないため、当然通夜振舞いはありません。
しかし、昼食や朝食として、故人が好きだった食べ物や、軽く食べられるサンドウィッチなどが振舞われることもあります。
◆形式によって変わる食事
葬式には、一般葬のほかに、家族葬や直葬、社葬などさまざまな形式があります。
小規模で行われる密葬、家族葬、直葬の場合、食事は省略されるケースが多いです。
もちろん、食事を振る舞ってはいけないというマナーはありませんが、会場によっては出前を頼めないという会場もありますので、注意が必要です。
お葬式の食事に関するよくある疑問
お葬式の食事はあまり参加する機会がなく、意外と細かいルールやマナーなどを把握できていない方も多いでしょう。
ここからはお葬式の食事に関するよくある疑問についてお答えていきます。
◆献杯とは?
「献杯」はお葬式の食事会において、個人に捧げる敬意を表し杯をあげることです。
乾杯と異なり、グラスを合わせたり高く掲げたりしてはいけません。
一気に飲み干すのもタブーとなっているので、しっかり覚えておきましょう。
◆枕飯と枕団子とは?
枕飯と枕団子は、個人に捧げられる食事のことです。
亡くなられた方が死後の世界でお腹が空かないように持たせるといった意味合いを持っています。
ただし、神教や仏教、宗派などによって異なるので、事前に確認しておくと良いでしょう。
◆お葬式の食事は持って帰れる?
葬式の食事の持ち帰りについては、地域によってルールが異なります。
基本的には持ち帰りができるところが多く、葬儀場のスタッフが詰めてくれるケースもあります。ただし、勝手に持ち帰るのだけはやめておきましょう。
◆コロナウイルス対策はどうする?
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、葬儀場での食事の形態が変化しています。
食事会の代わりに持ち帰りのお弁当形式にする場合や、カタログギフトに変更されることもあります。
葬儀場によっては全面飲食NGなどのルールを定めているところもありますので、きちんと確認して従うようにしてください。
もし飲食可だったとしても、手洗いうがいなど感染症対策をしっかりと行いましょう。
まとめ
お葬式の際に行われる食事会で一番大切なのは、故人を想う気持ちです。
楽しい食事会ではなく、あくまでも偲ぶ場ということを念頭に置き行動しましょう。
また、大まかなマナーはほとんど一緒ですが、細かいマナーに関しては、地域などで異なるので、不明な点や疑問点などは葬儀場のスタッフに確認するのが良いでしょう。