「通夜振る舞い」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
お通夜に関連することなのですが、お通夜やお葬式に参列する機会はそう多くありません。
「通夜振る舞い」がどういったもので何をするのかが分からないと、もし参加することになったときに不安ですよね。そこで今回は、そんな不安を解消するために、通夜振る舞いについて説明していきます。
通夜振る舞いとは?
通夜振る舞いには、二つの趣旨があります。
ひとつは僧侶、弔問客に食事や飲み物を振る舞い、お通夜に参列してくれた感謝を示すことです。
もうひとつは、故人の思い出話を食事をしながら語り合い、故人を偲ぶ場とすることです。本来は「通夜」という言葉そのまま、一晩中行うものでしたが、現在は短時間の食事会が一般的です。
通夜振る舞いでの食事をお斎(おとき)と呼び、お清めの意味もあります。地域によっては通夜振る舞いがなかったり、別の形式をとっていたりします。
通夜振る舞いの流れ
通夜から通夜振る舞いの終わりまでにどのような手順があるのでしょうか。流れが分かっていれば心構えもできますね。ここでは通夜振る舞いの流れを紹介していきます。
通夜振る舞いへの案内
喪主から、通夜式を終了する挨拶の終わりに案内の言葉があるか、葬儀場スタッフによる案内アナウンスがあります。
案内に従って、食事会場へ移動することになり、席順に関しては、地域にもよりますが、近年では厳密には決められていないことがほとんどです。
特別な指定がないか、周囲の様子を見て着席します。
不安ならスタッフに確認するのも良いでしょう。
開式
喪主が参列してくれた弔問客への感謝や、通夜振る舞いで一緒に故人のことを語り合いましょうという趣旨を述べて、故人への献杯とともに開式が終わります。(献杯がない場合もあります)献杯のときは、それぞれが飲み物を右手に持ち、胸の高さまで上げます。
「献杯」と喪主の言葉に続いて唱和するので、周囲と合わせて控えめな声でしましょう。
会食
故人と一緒に最後の食事をする場です。
同席者と食事をしながら、故人の思い出話などをします。親族は末席に座り、僧侶や弔問客へ挨拶などを行います。
宴会とは違うので騒ぐことがない、静かな食事会と考えてください。親族に話かけられた場合は遺族への配慮を忘れず、また他の弔問客に対して、挨拶に向かいますので、短い会話で切り上げましょう。
閉式
開式と同じように喪主から今日の通夜振る舞いへの参加のお礼と、次の日にある葬儀・告別式の場所や時間の案内があります。
挨拶が終わると、通夜振る舞いも終わりです。
地域にもよりますが、喪主をはじめ遺族は、基本的に弔問客を見送ることはせず、自席から目礼するなどにとどめることが多いです。
参加者も長居せず帰宅しましょう。
通夜振る舞いでの挨拶例
もし通夜振る舞いをする側になったとき、どのような挨拶をすればいいのでしょうか。ここでは、通夜振る舞いの挨拶について紹介していきます。
開式の挨拶例
「本日はお忙しい中、通夜に参列していただき、誠にありがとうございました。皆様にお越しいただき○○(故人)も喜んでいることと存じます。ささやかではございますが、お食事の用意をさせていただきました。お時間の許す限り、故人の思い出話とともに皆様と過ごさせていただければと存じます。本日は誠にありがとうございました。」
弔問客への感謝の気持ちと、食事をしながら故人を偲んで欲しいという思いを込めた文にします。献杯をする場合は「それではお手元の飲み物をお持ちください。献杯の唱和をお願いいたします。「献杯」ありがとうございました。」と加えて、挨拶最後に献杯を行います。
閉式の挨拶例
「皆様、本日は○○(故人)の通夜にご弔問いただき、誠にありがとうございます。皆様の温かなお心遣いに○○もさぞ喜んでいることでしょう。 お名残り惜しくはございますが、夜も更けて参りましたので、この辺りでお開きとさせていただきたく存じます。 なお、明日の葬儀・告別式は○○(会場名)で、○○時からでございますので、何卒よろしくお願い申し上げます。」
通夜振る舞いへの参加のお礼、翌日の葬儀・告別式の会場名、開始時間を伝えることが大事です。他にも葬儀・告別式の変更があった場合や伝えておきたいことも、この時点で分かっている情報を伝えておきます。
通夜振る舞いの料理内容は?
通夜振る舞いにはどのような料理が出てくるのでしょうか。料理の出され方やメニューが気になりますよね。ここでは通夜振る舞いの料理内容を紹介していきます。
大皿料理が主流となっている
元々は、肉や魚を避ける精進料理が主流でした。しかし弔問客が何人来るのか判断がつかないため、料理を何人分用意すればいいのか分からないことが多かったのです。
そこで、大人数でも気軽に食べられるもの、人数を気にしなくても良いものへと変わっていきました。最近では、サンドイッチやオードブル、寿司などの大皿料理がよく見られます。
お祝い事を連想させる料理は避ける
肉や魚を使わない精進料理ではありませんが、お祝い事に使うような伊勢エビや、鯛などは避ける食材です。
お祝い事のイメージがついてしまっている食材は避けるのが暗黙の了解となっています。
避けるべき、食材さえ使わなければ、食事のメニューに関しては制限がゆるく、故人の好きだった料理やお酒を出す場合もあります。
アルコール類は宗派により異なる
神道では、米から作られたお酒に穢れをはらう力があるとされ、お清めの意味で使われます。仏教の場合、故人の残した財物からお酒などを僧侶や参列者に振る舞うのは、お布施の意味があり、お酒の種類に制限はありません。
キリスト教では通夜振る舞いがない代わりに、通夜後にお茶菓子を振る舞い、アルコール類は出てきません。
通夜振る舞いのマナー
故人を皆で偲ぶという点から、通夜振る舞いは誘われたら基本的に参加するのがマナーです。参加した場合は、一口でもいいので食事に箸をつけるようにして、会話は故人に関係ない話は避けるようにしましょう。
思い出話に花が咲くこともありますが、大声や大笑いは慎んでください。
故人を偲ぶための場ということを忘れないようにし、お酒を飲む場合は飲みすぎないようにしましょう。
また、遺族の方への気遣いを忘れず、忌み言葉は使わないよう注意してください。
通夜振る舞いに関するよくある疑問
通夜振る舞いについてお話してきましたが、最後によくある疑問を補足説明していきます。
通夜振る舞いが持ち帰りの場合はありますか?
お酒や折詰、商品券やビール券などを持ち帰ってもらう場合もあり、地域によっては弔問客に返礼品を渡して通夜振る舞いの代わりとすることもあります。
現在では密を避けるということで折詰を渡して自宅で故人を偲んでもらうようなケースも増えています。
通夜振る舞いには必ず参加しなければいけませんか?
前述したように基本的には誘われれば参加するのがマナーです。しかし、どうしても参加できない場合もありますよね。そのときは、遺族や世話役の方たちに、やむを得ない事情があり辞退する旨を告げ、静かに退席してください。
家族葬でも通夜振る舞いが行われますか?
通夜後に用意していた食事を囲んで通夜振る舞いとする場合もあれば、通夜振る舞いせずに外食することもあります。
また、通夜そのものが省略化され、告別式のみを行う
「一日葬」と呼ばれるものもあり、身内間での話し合いの結果によります。
まとめ
通夜振る舞いは、僧侶や弔問客へ参列の感謝を示し、故人を偲ぶ場です。
地域によって作法や実施の差異はありますが、遺族への気遣いさえ忘れなければ自然とマナーも守ることができ、参加への不安もなくなくなります。
この記事を参考にして、遺族と故人を偲ぶ場として失礼のない通夜振る舞いを行ってくださいね。