葬儀の豆知識
葬儀の受付での挨拶は?マナーや注意点と併せて紹介
「受付係」は信頼できる人にお願いするものですので、もし「受付係」を頼まれた場合には信頼を損なうことがないよう、「やむを得ない事情がない限りは断らない」というのが社会通念となっています。
そこで本記事では、突然「葬儀の受付」をすることになった場合に備えて、「受付の役割」や「心構え」、「言葉遣い」や「振る舞い」などのマナー、そして特に受付では大切な「挨拶」の具体例を交えて、詳しく解説したいと思います。
葬儀の受付とは
葬儀の受付というと「記帳を促すこと」や「香典の受け取り」が思い浮かびますが、それだけではありません。受付係は弔問客の対応を一手に任され、その対応の善し悪しによっては葬儀の印象をも左右するほど重要な役割といえます。では、受付係は具体的にどのようなことをするのでしょうか。受付の流れに沿って見ていきましょう。
受付の役割
受付係の役割としては主に次のことが挙げられます。
- 開式前の受付準備
- 参列に来てくださった方への声かけや挨拶
- 参列者に記帳をしていただく
- 香典を受け取り管理する(会計係がいる場合は頂いた香典を会計係へ渡す)
- 参列者に会葬礼状・会葬御礼品・香典返しなどの返礼品を渡す
- 返礼品の残量を随時チェックし、不足しそうな場合は葬儀社スタッフに伝える
- 参列者の案内や誘導を行う
- 上着や手荷物の預かり(クローク係がいる場合はそちらへ案内をする)
- 供物、弔電の受け取り
- 葬儀後の受付の片づけ(預かった香典や芳名帳などは遺族に渡す)
葬儀の規模にもよりますが、一般的に受付は2~4人の複数人で行い、各々で全てに対応することもあれば、それぞれに役割を分担して行うこともあります。
受付の流れと場面ごとの挨拶
受付係は、会場に到着したらまず、喪主やご遺族に挨拶をしておくと良いでしょう。そのときは参列者の一人として、「この度はご愁傷様でございます。受付を仰せつかりました〇〇です。何かお手伝いできることがございましたらお申し付けください」といった挨拶をします。
またその際に「先にお焼香」をさせていただくと、後で慌てずに済むのでおすすめです。
それでは受付の流れに沿って、場面ごとの『挨拶』についてご紹介していきましょう。
①準備
受付の準備としては、開式の概ね1時間~1時間半前を目処に集合し、葬儀社スタッフから受付の仕方について説明を受け、以下の項目について確認をしていきます。
- 記帳から返礼品を渡すまでの流れ
- 記帳方法
- 芳名帳(または芳名カード)、筆記具、香典盆などの用具
- 返礼品の内容、数量、渡し方(香典が連名で出された場合や、一同で出された場合の例外パターンへの対応など)
- 式場、お手洗い、授乳室、喫煙所、自動販売機などの場所や行き方、駐車場やタクシーの利用について
②挨拶をする
準備を整えたら、いよいよ受付開始です。受付を開始するのは概ね開式の1時間前からとなります。弔問客がどこで何をすれば良いのか戸惑っている場合には、「こちらへどうぞ」とお声がけしましょう。
そして受付に来られたら「本日はご多用のところ、お越し頂きましてありがとうございます」や、雨天の場合は「本日はお足元の悪い中をお越し頂きまして、誠にありがとうございます」といった挨拶をします。
このとき、受付係は遺族の代理として弔問客をお迎えする立場ですので、遺族に成り代わって丁寧に感謝の言葉を伝え、失礼のない対応を心がけてください。
③芳名記入をお願いする
挨拶に続いて、参列者に「芳名帳(または芳名カード)」に、住所・氏名・電話番号・会社名・故人との関係などの記入を促します。その際は、「恐れ入りますが ご記帳をお願いいたします」といえば良いでしょう。
高齢の方や外国の方には代筆を頼まれる場合もあります。その場合は代わりに記帳して差し上げてください。
また、社葬や規模の大きな葬儀では事前に「芳名カード」を送付してある場合もありますので、そのような場合には「芳名カード」を受け取り、記入漏れがないかを確認しましょう。
④香典を受け取る
香典を受け取ることも受付係の役割です。親族が受付係を行う場合は「恐れ入ります、霊前に供えさせていただきます」や、「ご丁寧に恐れ入ります」などと挨拶をし、一礼しながら、両手で受け取ります。
受付係でも、故人と血縁関係にない場合は「お預かりします」と両手で受け取って、一礼をしましょう。
そして受け取った香典は、「会計係」がいる場合は会計係に渡し、受付で保管する場合は香典泥棒に気を付けながら、しっかり管理してください。
また、「記帳」と「香典の受け取り」は、その場によっては順番が前後するかもしれませんが、人の流れがスムーズになるように臨機応変に対応しましょう。
⑤返礼品を渡す
記帳と香典の受け取りが済んだ方には「ありがとうございます」とお礼を述べ、順番に返礼品を渡していきます。返礼品は「会葬礼状・会葬御礼品・お清めの塩」などをセットにしたものが一般的ですが、場合によっては「香典返し」としての品物をその場で渡すこともあります。
渡す際には「どうぞお持ちください」などの言葉とともに、品物を両手で差し出してください。受付を複数人で行う場合には「返礼品を渡す係」を決めておくと、スムーズに対応ができるでしょう。
⑥会場への案内
「記帳」「香典の受け取り」「返礼品のお渡し」が済んだら、参列者を式場へと案内します。
式場の配置によっては手で指し示して、「こちらへお入りください」というお声がけだけで済むこともありますが、ドアを開けて式場に入る場合はドアを開けて中にお通しします。特にご年配の方や妊婦の方など歩くことが大変そうな方には、優しくエスコートをするなどの配慮を心がけてください。
また、大きな荷物やコートなどをお持ちの場合は、受付でお預かりしたり、クロークがある場合はクロークの場所をご案内しましょう。
葬儀の受付のマナー
さて、ここまでは受付係の役割についてご説明してきましたが、ここからは葬儀で重要な「マナー」について解説します。
葬儀はフォーマルな場ですので、服装やヘアスタイルなども場に合わせた基本的なマナーを守らなければなりません。そして受付係は遺族の代理として参列者をお迎えする立場ですので、言葉使いや立ち居振る舞いもより丁寧な対応が求められます。
服装
受付係も葬儀のマナーに沿って、参列者と同等の「準喪服」を着用します。
《男性》
ブラックスーツに、ワイシャツは必ず白で、黒一色のネクタイ、黒の靴下、黒い革靴が原則です。
《女性》
黒のスーツ・ワンピース・アンサンブルなどに、ストッキングは黒、靴やバッグも全て黒で合わせます。
通夜では男女ともに、濃紺や濃いグレーのダークスーツなどの「略喪服」でも可能ですが、受付係は遺族側の代理としての立場もありますので、黒一色の「準喪服」を着用することが望ましいでしょう。
また、洋服や小物は全て光沢のない無地で、金具やリボンなどの飾りがないシンプルなデザインのものを選びます。髪型やお化粧も派手な印象を与えるスタイルは避け、控えめで清潔感のある、どなたにも不快感を与えないような服装や髪型に整えましょう。
言葉遣い
受付係として気を付けなければならないのは、服装などの見た目だけではありません。受付では常に遺族の方々や弔問客と接し、最も目に付きやすい立場ですから、言葉遣いにも気を配らなければなりません。受付の作業中だけでなく葬儀が始まる前から終わるまで、基本的には「です・ます」調の敬語で、丁寧な言葉遣いをしてください。知人や友人など顔見知りの弔問客が訪れた場合でも極力私語は慎み、周りの方々に失礼のないよう言動には十分に注意しましょう。
葬儀の受付を行う際の注意点
受付係は、スムーズに滞りのないよう受付の作業をすることが重要な役割ですが、それだけではなく、遺族の方々や参列に来てくださる全ての会葬者に失礼のないよう気配りをする必要があります。冒頭でもお伝えしたように、受付の対応の善し悪しで葬儀の印象が大きく左右されますので、受付をする際の心構えや注意点にも少し触れておきましょう。
声の調子を意識する
葬儀会場では声のトーンも重要です。悲しみの場ですから明るい口調ではいけません。ボリュームを少し落としぎみにし、やや低めの声を意識して挨拶しましょう。参列者の中にはご高齢の方もいらっしゃいますので、記帳をお願いしたり会場などのご案内をする際には、早口にならないように注意し、はっきりとした聞き取りやすい口調を心がけます。お辞儀をする際にも急がず、ゆっくりと丁寧に頭を下げるようにしてください。全体として穏やかでゆったりとした言動を意識するとよいでしょう。
弔問者からの質問に答えられるようにする
受付は弔問客から何かを尋ねられることが多くあります。ですので、式の流れや終了時間についてはもちろんのこと、お手洗いや授乳室の場所、駐車場やタクシーの利用などについても、しっかりと把握をしておきましょう。式場や待合室、お手洗いなどには実際に足を運んで、位置を確認しておくことをおすすめします。このように、質問されそうなことをあらかじめ予想して下調べをしておき、さまざまな質問に対応できるようにしておきましょう。
まとめ
今回は葬儀の「受付」の内容と、具体的な『挨拶』の例、そしてマナーや注意点も併せて解説しました。
受付係を行う際には多くの言葉は必要ありません。良いお葬式になるようにという心構えで臨み、短い言葉の中に弔意と感謝の気持ちを込めて、ご遺族や弔問客に接することが最も大切です。
そして受付係は、ご遺族に成り代わって参列者をお迎えする重要な立場であることを十分に心得て、しっかりと対応できるようにしてくださいね。