初めてキリスト教式の葬儀に参列する際、どのように対応すれば良いのか分からない方も多いと思います。
仏教式のお葬式では香典の準備が必要ですが、キリスト教式のお葬式ではどうなのでしょうか。
この記事では、キリスト教での香典にまつわるマナーを中心に、キリスト教式の葬儀に参列する際の注意しておくべき点について解説しています。
ほかにも香典袋の種類、書き方や包む金額の相場、葬儀に参列する際のマナーなど、予め知っておきたいポイントも抑えておきましょう。
キリスト教の葬儀でも香典は必要?
キリスト教式のお葬式に参列する場合でも、お供えする金銭の用意が必要です。
日本では仏式のお葬式が多いので、「香典」という言葉を耳にしたことのある方は多いと思います。
教会式でのお葬式でも、いわゆる「香典」を用意し、故人の御霊前に捧げるのですが、呼び方やお金を包む香典袋のマナーなど、仏式のお葬式とは異なる点がいくつかあります。
宗派によって気を付けた方が良い点等にも違いがありますので、以下に続く解説を参考にしてください。
キリスト教式では香典ではなく「お花料」や「御花料」と呼ぶ
「香典」とは仏教式のお葬式で使用する言葉で、お花や線香の代わりとして故人様に供える金銭のことです。
キリスト教のお葬式ではお線香等を用いることは無く、故人へ手向ける生花を準備することから、「お花料」や「御花料」、「献花料」などとしてお供えする金銭を準備します。
カトリックであれば、「御(お)花料」、「御ミサ料」、「御霊前」などの記載をします。
プロテスタントの場合、「御(お)花料」、「忌慰料」などと記載します。
プロテスタントではミサは行われないため、「御ミサ料」を用いることはしません。
また「御霊前」も宗教的価値観の違いから好ましくない場合があるため、プロテスタントのお葬式では使用しません。
香典返しはなく返礼品を渡す習慣がある
「香典返し」とは、四十九日法要後の忌明けに、いただいた香典額の3分の1から半額を目安にお返しの品を贈ることをいいます。
キリスト教の場合、本来は香典返しの習慣はありませんが、日本的な半返しの習慣に倣い、最近では「御花料」などへのお返しを行うことが一般的です。
お返しの時期についてですが、カトリックでは故人が亡くなられてから30日目の「追悼ミサ」の後に、プロテスタントの場合は1か月後の召天記念式の後に返礼品を贈ります。
キリスト教式葬儀での香典(御花料)の相場
キリスト教式のお葬式での御花料(香典)の金額相場ですが、基本的に仏式やほかの宗教の香典額と同様で、故人との関係の近さや年代によって金額が変動します。
親族であれば最低でも1万円以上必要になり、職場・交友関係であれば5千円から1万円ほどになります。
故人に対する気持ちから、相場よりもあまり多く包みすぎてしまうと、却ってご遺族が困ってしまうことも考えられますので、一般的な金額の目安にならうと良いでしょう。 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上
|
両親・義両親 | 50,000円 | 50,000円 | 100,000円 | 100,000円 |
祖父母 | 10,000円 | 30,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
兄弟・姉妹 | 30,000円 | 50,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
親族 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
友人・知人 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 | 10,000円 |
上司・同僚 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 | 10,000円 |
部下・後輩 | 5,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
キリスト教式葬儀での香典袋の選び方
教会でのお葬式に参列する際、御花代などはどのようなものに包んで持っていけば良いのでしょうか。
仏式用の香典袋は様々な場所で多く取り扱われていますが、キリスト教式のお葬式用にお金を包む際は、香典袋にも気を付けなくてはいけません。
スーパーや文房具店でもキリスト教専用の香典袋が販売されていますが、もし見当たらなかった場合の代替品などもあります。
気を付けるべきポイントについては以下の各項目をご参照ください。
キリスト教式の香典袋を選ぶ
キリスト教専用の香典袋のデザインは、白地に、イエス・キリストの象徴である十字架や聖母マリアを表すユリが描いてある、水引の無いものになります。
「御花料」や「御ミサ料」(カトリック)、「忌慰料」(プロテスタント)などと表書きのある封筒があれば、それらを選びましょう。
カトリックでしたら、「御霊前」と書かれている仏式の香典袋でも構いません。
もし止む無く水引が書いてある封筒を選ぶ場合は、白黒か双銀で、結び切りやあわじ結びのものにしましょう。
ハスの絵が印刷されている香典袋はマナー違反
仏式用の香典袋では、ハスの絵が印刷、型押しされているものもあります。
ハスは仏教と深い関わりを持つ象徴的な花であるため、ハスのデザインの香典袋をキリスト教やほかの宗教のお葬式で用いると失礼に当たります。
「御霊前」と書かれている仏式の香典袋を選ぶ際も、ハスの絵が描かれているものは使用しないようにしましょう。
真っ白な熨斗袋でも代用可能
もし近くの店舗でキリスト教用の不祝儀袋(香典袋)を見つけられない場合は、真っ白な熨斗袋で代用可能です。
最近はネットでもさまざまな香典袋が販売されているのでそちらを活用するのも良いですが、ネットだと届くまでに少し時間がかかってしまいます。
香典袋は基本的に急に必要になるものなので、近所のスーパーや文具店、コンビニを確認してみて、もしキリスト教用の不祝儀袋が見つからなければ、白い熨斗袋を使いましょう。
キリスト教式葬儀での香典袋の書き方
最近の香典袋には表書きがすでに印刷されているものも多いですが、金額や名前など、ほかに自分で書かないといけない部分があります。
使用するペンや氏名を記載する位置などの細かいマナーがありますが、基本的には仏式の香典袋を用意するときと同じです。
具体的にどのように書けば良いのか、順に解説していきます。
薄墨色で書くのがマナー
まず香典袋に記載する時に使用するペンですが、仏式の時と同様に、薄墨の筆ペンを用いましょう。
薄墨色が弔事に使用される理由は諸説ありますが、故人を追悼する気持ちを表すためとされています。
最近は慶弔両方に使える筆ペンがコンビニ等でも販売されていますので、筆ペンが自宅に無い場合でも必要な際は購入して用意するのが良いでしょう。
表書きは「お花料」や「御花料」
「表書き」とは、熨斗袋の上段に、どのような目的で贈り物をしているのかを表す言葉です。
キリスト教の葬式であれば、「御(お)花料」と記載して弔意を表すのがあらゆる宗派においても一般的です。
もちろん、カトリック、プロテスタント、それぞれの宗派に応じて表書きを書き分けても問題ありません。
ただ、先述の通り宗派によって使えない言葉もあるので、悩むようであれば無難に「御花料」としておくのが良いでしょう。
氏名は香典袋下段の中央に記載
氏名は、会葬者(贈り主)の名をフルネームで香典袋の下段に記入します。
氏名の記載方法については、キリスト教の特別なルールがあるわけでは無く、仏式と同じルール通りに書けば大丈夫です。
中袋がある場合は、表面に包んだ金額、裏面に住所と氏名を記載しますが、こちらは濃い墨を使用しても問題ありません。
金額を記載する時は、「金壱万圓也」のように大字(だいじ)を用いて数字を書きましょう。
複数人で書く場合は並列して記載
会葬者が複数人の場合、人数に応じて記載方法が変わってきます。
・夫婦のように2人で参列する場合は、夫の氏名を下段中央に書き、左側に妻の氏名を添えます。
・3人の連名にする場合は、立場や年齢が高い順に、下段中央から左側に向かって並べて記載(同格であれば五十音順に記載します)。
・4人以上になるようでしたら、代表者1名の氏名を下段中央に記載し、「外一同」等と書き添え、白い便箋等の別紙にそれぞれの氏名や住所、金額を書いたものを中袋に入れておきましょう。
キリスト教式葬儀での香典(御花料)の渡し方
葬儀に参列する際、どのタイミングで香典を渡せば良いのか悩む方も多いと思います。
またキリスト教の場合、死に対する考え方も仏教とは異なるため、会葬時のふるまいにも注意しなくてはなりません。
以下の項目で、御花料(香典)を渡すタイミングや、参列者として気を付けたいポイントについて詳しく紹介いたします。
教会入り口の受付で渡す
キリスト教式の前夜式や通夜の祈り、葬儀は教会で行われることが多いです。
参列する場合、教会の入り口に受付が設置されていますので、記帳と併せて御花料を渡します。
キリスト教では、生前に自分の葬儀について色々と取り決めている場合も多く、参列者への返礼品も用意されていることがあります。
返礼品に応じて、御花料の渡す位置が定められている可能性もありますので受付の案内に従いましょう。
また御花料を差し出す際は袱紗を用い、香典袋の字が相手から読める向きに整え、袱紗の上に乗せて渡します。
お悔やみの言葉は言わない
仏教式のお葬式では「ご愁傷さまです」のようなお悔みの言葉を掛けますが、キリスト教のお葬式でお悔みの言葉を用いることはしません。
魂は永遠であり、死は悼むべきものではないという宗教的観念があるため、「故人様の安らかな眠りをお祈りいたします」のような言葉を使います。
ほかにも「神様の平穏がありますように」「故人様の平安をお祈りいたします」のような慰めの言葉を用いましょう。
まとめ
キリスト教式のお葬式について、香典(御花料)にまつわるマナーを中心に解説いたしました。
日本では圧倒的に仏教式のお葬式が多いこともあり、なかなかキリスト教の葬儀のマナーについて触れる機会がありません。
しかし訃報は突然訪れるものなので、事前に香典を含む葬儀全般のマナーを把握できていると安心です。
宗教が異なれば、様々な価値観が異なるのは当たり前のことなので、故人様へのお悔みの気持ちを充分に表すためにも、TPOに合わせた振る舞いをしましょう。
もしどうしても分からないことや困りごとがある際は、同じく参列する知り合いに確認してみたり、教会へ直接問い合わせてみたりしても良いでしょう。