葬儀の際、多くの方が悩まされるのが「お布施」についてかと思います。
明確な金額は提示されず「お気持ちで結構ですよ。」といわれても困惑してしてしまうこともあるでしょう。
しかし、不適切な金額や、渡し方をしてしまうとトラブルの原因になりかねません。
今回の記事では葬儀における「お布施」について詳しく解説していきますので、ぜひご参考にしてください。
お布施とは?
お布施とは、葬儀や法要の際に、寺や僧侶に渡す謝礼のことです。
供養の儀式の対価ではなく、飽くまで謝礼なので、読経料や戒名料とは呼ばれません。
現在では、「お布施」といえば「お金」というイメージがありますが、本来の意味は仏教の「六波羅蜜(ろくはらみつ)」の「布施」に由来しています。
六波羅蜜とは仏教における六つの徳目の総称を指します。
【布施(ふせ)】:人に施しを与えて、親切にすること
【持戒(じかい)】:欲望を制御し、悪事を働かず自覚的な行動すること
【精進(しょうじん)】:努力を怠らないこと
【忍辱(にんにく)】:苦しみに耐えること
【禅定(ぜんじょう)】:心を落ち着かせて行動を顧みること
【智慧(ちえ)】:学ぶことで精神を磨き、正しい判断力を持つこと
この六波羅蜜の「布施」には3種類あります。
- 財施・・・金銭、衣服、食料などを施すこと
- 法施・・・ものではなく、仏教の教えを説いたり読経などを施したりすること
- 無畏施・・人の不安や恐れの念を取り除いてあげること
葬儀で私たちが寺や僧侶に渡す「お布施」は財施にあたります。
また、寺や僧侶が読経することは、法施にあたります。
お布施にはこのようにしっかりとした意味があるので、お布施はただの謝礼として渡すのではなく、本来の意味を理解して渡すことが大切です。
お布施の相場
葬儀や法要を行う際に最も悩むことはお布施に包む金額のことかと思います。
お布施には決まった金額というものは明確に定められていません。
しかし、葬儀をあげてもらうお寺に「ほかの人がどれくらいの金額を包んでいるのか」を訊ねておけば、目安として金額を教えてもらえることが多いです。
ここからは、その目安となる葬儀におけるお布施の相場をご紹介します。
同じ仏葬であっても宗派によって包む金額が変わってくるので、宗派ごとに分けて紹介していきます。
浄土宗
一般的に浄土宗ではお布施として30~50万円ほど、あるいは年収の10~20%ほど包むことが多いです。
しかし、お寺と家のつながりや、地域によって包む金額は大きく変わります。
また、葬儀の大きさによっては100万円以上になる場合もあります。
浄土真宗
浄土真宗のお布施は20万円程度で収まることが多いです。
浄土真宗では法名がすべて平等なため、ほかの宗派と比べて比較的包む金額が少ない場合が多いです。
また東京ではほかの地域と比べ、少し包む金額が多くなる傾向があります。
日蓮宗
日蓮宗のお布施は30万円前後になることが多いです。
また日蓮宗の葬儀では僧侶を多く呼ぶこともあるので、その場合は僧侶一人一人にお布施を渡す必要があります。
曹洞宗
曹洞宗のお布施では、戒名の文字数や、格式によって大きく変わってきますが30万円~という場合が多いです。
真言宗
真言宗のお布施も同様に、戒名の文字数や格式、文字の大きさによって包む金額は大きく変わってきますが、おおよそ30万円~という場合が多いです。
お布施の 包み方
葬儀の際のお布施には2種類の包み方があります。
奉書紙を使うお布施は最も丁寧な方法です。
半紙を使ってお札を包むか、中袋を用意してお札を包んでおきます。
お札を包む際には肖像がある面を上にくるようにしましょう。
その上から奉書紙を使ってさらに包みます。
また奉書紙のざらついている面は裏側なので、間違えないように注意しましょう。
白い封筒を使う場合には、半紙や中袋で包んだお札を無地の白い封筒に入れて渡します。ただし、表面にお布施と印刷されている封筒の場合は、直接お札を入れてしまって構いません。
また封筒の裏面には贈り主の住所と包んでいる金額を書きましょう。
奉書紙は文具店などで取り扱っているので、余裕があれば奉書紙を用意してお布施を包むことをおすすめします
お布施の表書き の書き方
お布施の上包みの表面には、薄墨ではなく、黒墨で「お布施」または「御布施」と書きます。
また、交通費や、宴席代もまとめて渡す場合には「御車料」「御膳料」とも記載しておきましょう。
中袋にも記入しなければならない事項があります。
中袋の右側もしくは表面には包んであるお布施の金額を「旧字体」で記入します。
たとえば、5万円のお布施の場合は「金伍萬圓」、10万円のお布施であれば「金壱拾萬圓」といった形式です。
また、お札を包む中袋の裏の左側には贈り主の名前と住所を記入し、誰からのお布施か確認できるようにしましょう。
地域によって表書きの書き方に独自のマナーがある場合もあるので、分からないことがあれば知人や親戚に相談しておくと良いでしょう。
お布施の渡し方
葬儀の際のお布施の渡し方にも作法があります。
お布施は、手渡しではなく、「切手盆(きってぼん)」というお盆の上に乗せて渡すようにしましょう。
また、掛袱紗(かけふくさ)や袷帛紗(あわせふくさ)という風呂敷状のものでお布施を包むのも作法とされています。
切手盆にお布施を乗せる際には、お布施の向きは文字が自分のほうから見えるように置くようにしましょう。
そして、お布施を渡す時になったら時計回りで回して、僧侶から文字が読めるような向きにしてお布施を差し出します。
まとめ
お布施にはさまざまな作法やマナーがありますが、最も重要なことは「感謝の気持ち」を持つことです。
寺や僧侶へ心を込めて感謝の気持ちを伝えることができれば、作法やマナーに小さな誤りがあったとしても、大きな問題にはならないでしょう。