キリスト教の葬儀に参列する時の守っておくべきマナーを知っていますか?キリスト教の葬儀と仏式の葬儀は違うことが多いのです。ここでは、葬儀の進め方や日本の仏式の葬儀との違いと注意点についてお話していきます。
キリスト教の特徴
キリスト教にはカトリックとプロテスタントの2種類があります。キリスト教は、仏教やイスラム教と並び世界の三大宗教の一つです。全世界で20億人もの信者がいるとされています。
【キリスト教の信者数】
日本におけるキリスト教信者は260万人前後といわれています。このキリスト教を開いたのはイエス・キリストで、その教えは旧約聖書等が有名です。日本におけるキリスト教は諸外国に比べて信者の数は少ないですが、日本各地に教会を持ち、特に長崎県では人口のおおよそ4%がキリスト教信者とされ、日本ではもっともキリスト教信者が多く暮らす地域となっています。
カトリックとプロテスタントの違い
キリスト教はカトリックとプロテスタントに分けることができますが、大きな違いがあるのが特徴です。ここでは、この2つのいくつかの違いをお話していきます。
【聖職者の呼称】
カトリックは、キリスト教の最大宗派で最高指導者はローマ教皇とされています。それぞれの聖職者(宗教上の聖職に就いている人)をカトリック教の場合は、聖職者による尊称で正式な職名ではなく、司祭や神父と呼びます。神父は、男性のみが就くことができます。代わりに修道女(シスター)が存在します。
カトリックは神父の結婚や恋愛が認められていません。なぜカトリックでは、女性の神父がいないのかというとイエス・キリストが選んだ12人の使徒の中に女性が一人もいなかったことが挙げられます。
一方、プロテスタントの場合は聖職者のことを牧師と呼びます。牧師とは聖職者ですが、一般信徒と差異はないという立場です。プロテスタントは女性でもなれます。プロテスタントの牧師は、正式には聖職者ではなく教職なので、女性の牧師も女性の聖職者ではありません。
また、牧師は男女両方存在し、結婚も許されています。
【聖地】
カトリックの聖地エルサレムやバチカン王国があります。ローマ・カトリック教会の伝統的な巡礼地という意味あります。実際には他にもたくさんの聖地があります。こうした聖地を巡礼することで、信者は、病気の癒しなど特別な恵みを頂くことができると考えられていました。
一方、プロテスタントには聖地がありません。聖地という概念も、巡礼の伝統もありません。「聖書ゆかりの地」として、エルサレム、ベツレヘムなどを巡るツアーがありますが、聖書に描かれた土地を見てくる観光旅行であって、聖地巡礼という意味合いではありません。
そのツアーに行ったとしても、「病気が治る」「天国に行ける可能性がある」など、そういう特別な恵みが頂ける考えはプロテスタントには、ないのです。
キリスト教の葬儀の作法・マナー
キリスト教の葬儀は、日本の仏式の葬儀と異なる作法やマナーがあります。ここでは、キリスト教の葬儀に参列する場合の作法やマナーについてお話していきます。
【お悔やみの言葉】
先ず、参列者として仏式の葬儀と大きく異なるのは、キリスト教の葬儀では日本の仏式とは違い、お悔やみの言葉をいわないということです。仏教とキリスト教では、「死」に対する考え方が違うのです。
カトリックは「ご遺族の上に、主の慰めがありますように…」
プロテスタントの場合は「安らかな眠りにつきますようにお祈り申し上げます」などの言葉をかけるのがいいでしょう。
これはキリスト教における人の死が本人や家族にとって不幸なことではなく、永遠の命の始まりであると考えるためです。
日本では残された遺族に対して「この度は御愁傷さまです」等のお悔やみの言葉を述べますが、キリスト教の場合は、次の世界での安寧を祈る言葉をかけるのがマナーとされています。
【献花】
キリスト教の葬儀ではカトリックもプロテスタントも、お焼香というものがなく、その代わりに花を手向ける「献花」が行われます。
キリスト教の献花のマナーは、花を受け取る際は、その花を右手側、茎を左手側で、添え
れるよう、両手で受け取ります。
そして、お焼香と同じように遺影に一礼します。
献花のために、受け取った花は、祭壇に茎側が来る方向に回すのですが、この時、必ず、「時計回り」に回してください。
花は右手に花の部分を持ち、献花台では花の根元を故人に向け花の部分を参列者に向けて献花を行います。献花を終えたら、ご遺族と聖職者(神父、牧師)へ一礼をしてから、席に戻ります。 他の参列者がいる場合は、その方たちの献花の方法を見て参考にした方がよいでしょう。
【服装】
キリスト教の葬儀に参列する際の服装ですが、これは日本の仏式の時と同じ物で一般的に男性は黒い喪服と黒いネクタイ等で大丈夫です。
一方、女性は黒のワンピースやスーツ等でも大丈夫ですが、派手なアクセサリーやメイクは控える様にしましょう。
【聖歌・賛美歌】
キリスト教式の特徴である聖歌(東方教会、カトリック、聖日本福音連盟などが使っている言葉)賛美歌(プロテスタント諸派の中のキリスト教などが使っている言葉)ですが、これは強制的に参加しなければいけないというものではありません。
事前に歌や祈りの一節が書かれた紙が配られるため、できるだけ参加してください。
聞いているだけでも咎められることはありませんが、小さな声でもいいので、故人のためにしっかりと歌うことがマナーです。
キリスト教の葬儀を執り行う時の注意点
キリスト教の葬儀は、日本の仏式の葬儀とは異なる点があります。ここでは、参列する際のいくつかの注意点についてお話していきます。
【カトリックかプロテスタントか確認する】
キリスト教の葬儀で大切なことは、葬儀そのものがカトリックかプロテスタントであるかによって葬儀の進め方が異なるので、参列する葬儀がどちらになるのかを事前に確認しておくことが必要です。
どうしても、わからない場合には、葬儀の案内や葬儀進行中でも判別することも可能で、例えばミサという言葉がある場合にはカトリックと判断できます。また、司祭が神父と呼ばれていたら、カトリック、牧師であればプロテスタントと覚えておくといいでしょう。
【香典】
日本の葬儀に付き物の香典ですが、キリスト教の葬儀では「御花料」という名目でお渡しすることが適切です。また、使用する香典袋は日本の仏教用の蓮の花等が印刷されていない物を使用しましょう。
キリスト教用の十字や、ユリの花などのデザインの物が望ましいです。もし、見つからなければ、白い封筒でもよいでしょう。
表書きは、カトリックもプロテスタントどちらの場合でも「御花料」と書いてください。
もし、「御ミサ料」とする場合は、カトリックの葬儀の時のみにしてください。
「御霊前」と記載する場合は、プロテスタントのみで使用してください。
キリスト教では、お香をたく文化がありませんから、「香典」という記載を使用しません。わからない場合は、「御霊前」と書くとよいでしょう。
【数珠】
日本の葬儀では皆さんが数珠をお持ちになりますが、数珠は仏教における仏弟子(仏教の信者)を意味したものですので、キリスト教の葬儀では数珠は不要となります。
まとめ
あまり日本人には馴染みの少ないキリスト教の葬儀に参列する時の作法やマナーについてお話してきましたが、お悔やみの言葉、宗教は違っても、故人を悲しむ気持ちは同じです。
献花や服装、最低限のルールを抑えておけばそこまで難しいことではありません。それでも不安な時は参列者の作法などを見て参考にしてくださいね。